所有権に基づく妨害排除


◆ 事件内容

依頼人は,住宅地に100坪の土地を所有していました。

なお,従前は,北側の2mは通路となっており,西側の公道に出るために,東側隣地の方もこの敷地内を通り,さらに,西側の隣地の方の敷地を通って,西側の公道に出ていました。

しかし,昭和61年になり,依頼人の土地の東側に,公道に通じる立派な道路ができたため,依頼人も西側隣地の方々も,皆その通路を使って公道に出るようになりました。

一方,西側隣地の方は,近隣の同意のもと,依頼人の土地と西側の土地の境を閉鎖しております。

ところが,最近になり,東側隣地の方(相手方)が,突然,依頼人の土地の北側部分(従前,通路として使用されていた部分)に杭を打ち始め,

「この部分の通行権は,旧地主に金銭を支払って通路として確保したものであるから,自分の方で通路として使うので,依頼人には使わせない」

と一方的に言ってきました。

依頼人は驚いて,私に相談に来ました。

 

◆ 解決内容

1 私は,とりあえず現地を確認するため,直ちに現地に出向きました。

現地では,ちょうど,東側隣地の通行権を主張している方が,業者に杭打ちを指導していました。

しかし,杭を打たれると,依頼人の土地に車で進入することが困難となり,依頼人は,事実上の紛争を避けるため,近くに駐車場を借りなければならない状態になります。

 

2 そのため,私は相手方に対し,

「仮に,従前,通路として使用する権利があったからといっても,依頼人が通路として使用出来ないような杭を打って,独占的に依頼人の敷地の北側部分を占有してしまうことは,許されない」

ことを説明し,実力行使はしないものの,「杭打ち作業は止めてほしい」と要求しました。

しかし,その場では,相手方は,「弁護士と相談したうえでの行動である」として,業者に杭打ちを指示していました。

そこで,私は相手方に対し

・ もし杭を打つのであれば,直ちに,依頼人の所有権に基づく土地の明渡請求と,妨害予防請求の裁判を提起すること

・ その前提として仮処分申請をすること

を申し伝えました。

 

3 その結果,翌日,相手方は工事は進めていないことがわかりました。

しかし,何本かの杭は,打たれたままになっていました。

 

4 そのため,依頼人の通行の妨害にはならないことから,仮処分申請は行わないこととし,直ちに,残った杭を撤去すると同時に,今後,依頼人の土地使用を妨害することがないように求める裁判を起こす準備を始め,相手方にその通告を行いました。

 

5 その結果,相手方から,

「改めて別の弁護士に相談したところ,杭を打って依頼人の敷地を占有してしまうことは違法であるから,辞めるようにとの指導を受けた」

とのことで,謝罪の連絡が入りました。

 

6 しかし,このままでは,依頼人としては不安であるため,相手方との間で,「合意書」を作成することとしました。

その内容は,

・ 依頼人が本件土地を所有していること

・ 相手方が,旧通路部分に通行権があるものと誤信して,依頼人の占有を排除し,占有するための工事に着工した事実を認めること

・ 7日以内に,この間,依頼人の敷地に埋設した杭等を一切撤去して,旧通路部分の使用権限がないことを認め,依頼人の土地を現状に復すること

・ 相手方は,自己の行った行為について謝罪する一方,依頼人も相手方に対し,損害賠償請求を行わないこと

というものでした。

 

7 これにより,円満解決し,依頼人も,当然のことですが,自分の所有する土地を全面的に問題なく安心して使用することができるようになり,大変満足していました。

 

 

◆ 弁護士のコメント

相手方は,30年以上前まで通路として使っていた依頼人の土地の一部について,この30年間は依頼人が敷地として使用していたにもかかわらず,いきなり,依頼人の占有を排除して,杭打ちを始めました。

このような無謀な話は,私もほとんど経験がありませんでした。

相手方は,弁護士が,そのような行為を行っても問題ないと述べたため,確信をもって行動に出たとのことでした。

相手方がどのように弁護士に説明したのかはわかりませんが,たぶんに自分に都合に良いように説明したのだと思います。

この事件を通して,相談者の話を聞くときは,細心の注意をもって話を聞き,何らかの疑問があれば,その点も十分聞き出し,そのうえで,注意して助言をしないと,相談者は良いとこどりをして,勝手な解釈で行動を起こしてしまう危険があるということを,同じ弁護士として身にしみて感じました。