離婚する際,婚姻期間中に購入した不動産を処分する際の注意点

◆ 事件の内容

御相談者(夫)は,50代の男性。約25年前に婚姻した妻との離婚を考えていらっしゃいました。

お子さんは女の子を2人授かっていましたが,いずれも成人し,婚姻して自宅からは出て行っていました。

離婚原因は妻との信仰の違いでした。

夫婦で異なる信仰をもっており,それが日常生活にも影響を及ぼし,婚姻関係が破たんしてしまったとのことでした。

離婚すること自体に夫婦で争いはありませんでしたが,約10年前に購入した自宅の住宅ローンの残金が約2500万円残っており,この約2500万円の借金をどうしたらいいかというのが,御相談内容でした。

自宅については,約2000万円との査定が不動産業者から出されていました。

仮に,不動産業者の手数料等を考慮せず,2000万円で自宅を売却することができたとしても,住宅ローンは約500万円(2500万円-2000万円)残ります。

ローンで購入した不動産を売却しても,ローンが残ってしまう状態のことを,「オーバーローン」といいます。

御相談者の自宅は,オーバーローンでした。

自宅の所有名義は,土地建物ともに御相談者名義でした。

住宅ローンについても御相談者が単独の債務者とされ,自宅に抵当権は設定されていましたが,妻が連帯保証人や連帯債務者とされてはいませんでした。

夫婦には,自宅以外に財産はありませんでした。

 

 

 

◆ 事件の解決

弁護士は,以下の通り,アドバイス致しました。

 

・ 自宅を売却し,代金2000万円を住宅ローンの残金約2500万円に充てても,約500万円の借金が残る。

 

・ 確かに,財産分与としてマイナスの財産(=借金)を分与し,妻に500万円の半分である250万円の借金を負担するように求めることはできる。

しかし,妻の同意を得ないで250万円の借金を負担させることはできないであろう。

妻が同意しても,その後返済を怠った場合,銀行との関係では御相談者だけが債務者とされている以上,銀行との関係で最終的に責任を負うのは御相談者である。

 

・ 自宅売却後に残る約500万円の借金を,今後返済し完済したとしても,自宅が残せるわけではない。

 

・ 離婚に際し,身分関係の他,借金についても整理するため,自宅を売却し住宅ローンに充てた後に残る約500万円の借金については,破産手続をとり免責してもらうのがよい。

 

御相談者は,弁護士のアドバイスを受けて,まず,自宅を売却し,その後,残った住宅ローン残金については,破産手続をとることにしました。

御相談者に不動産業者のお知り合いがいないとのことで,弁護士が懇意にしている不動産業者を紹介しました。

この不動産業者が尽力してくれた結果,自宅を約2600万円で売却することができ,御相談者は破産手続をとることなく,住宅ローンを処理することができました。

その後,御相談者は,財産分与は行わないこと等を内容とする「離婚協議書」を取り交わして,妻と離婚しました。

御相談者は,自宅売却の際に尽力してくれた不動産業者に,新たに見つけてもらった新居に引っ越し,優雅な独身生活を送っていらっしゃいます。

 

 

◆ 弁護士のコメント

離婚に際し,婚姻期間中に夫婦が協力して形成した財産を分ける手続を一般的には行います。

この手続を「財産分与」といいます(民法768条)。

財産分与においては,プラスの財産(現金,預貯金,不動産,株式等)の他,マイナスの財産(借金,各種ローン(住宅ローン,自動車ローン等))の分与が問題となる場合があります。

典型的には,婚姻期間中に,夫名義で住宅ローンを組み,夫の単独名義で自宅を購入したが,離婚に際し,自宅を売却しても住宅ローンが残ってしまうような場合です。

確かに,夫は,財産分与として,婚姻期間中に負ったマイナスの財産の半分を負担するよう妻に求める(主張する)ことはできます。

しかし,妻の同意を得ないで一方的に負担させることはできません。

また,仮に,妻が同意しても,その後返済を怠った場合,債権者(銀行)との関係では夫だけが「債務者」とされているのですから,債権者(銀行)との関係で最終的に責任を負うのは夫です。

債権者(銀行)との関係で最終的に責任を負うというのは,住宅ローンについては夫だけが債務者であり,住宅ローンの支払いを怠れば,夫の財産(給与)が差し押さえられる等強制執行を受けるという意味です。

したがって,自宅売却後に住宅ローンが残る場合は,自己破産の手続をとり,借金の整理をするのが通例です。

もっとも,本件では,弁護士が懇意にしている不動産業者が尽力してくれたおかげで,御相談者は破産手続をとらなくてもよくなりました。

本件のように,法律問題を処理する過程で,不動産を処分しなければならないケースがあります。

このような場合,地元千葉に根付いて,千葉の不動産取引に精通し,また,御依頼者や弁護士の意向を理解し行動してくれる不動産業者が,ぜひとも必要になります。

しかし,このような不動産業者は一朝一夕では見つかりません。

当事務所は,約30年にわたり,千葉県民の皆様から法律問題を御相談頂いております。

約30年にわたる実績から,上記のような千葉の不動産取引に精通した不動産業者の協力を得ることができる体制にあります。

不動産の処分が法律問題を処理する際に必要なるケースでは,上記のような不動産業者の協力を得られるか否かで,法律問題の処理が変わってくることもあります(本件が,そのケースでした。)。

不動産の処分が必要になる法律問題では,上記のような不動産業者の協力を得られる法律事務所か否かが,法律相談をするか否かの基準になると思います。