交通事故(被害者側)3


◆ 事件内容

依頼者(被害者)は,車(自家用普通乗用自動車)の運転中,交差点で信号待ちをしていたところ,後方から直進してきた加害車両(自家用普通貨物自動車)に追突されました。

なお,依頼者は,高齢であり,既に会社を退職し,現在はアルバイト的な仕事をしておりました。

また,加害者は,業務中(仕事中)の事故ということでした。

 

◆ 解決内容

相談にいらした段階で,依頼者は,加害者の任意保険会社から,約160万円(既払い金を除く)の支払の提示を受けていました。

一方,弁護士として,依頼者の損害を目一杯計算すると,約250万円となり,その差は90万円ということになりました。

しかし,保険会社の提示額以上に請求するためには,裁判を行うほかはなく,裁判を行った場合,相手方(事実上,保険会社の代理人がつきます。)からは,依頼者が高齢であり,傷害が「頚椎捻挫」や「椎間板ヘルニア」というような場合(もともと,年をとると,多かれ少なかれ脊柱管は狭くなります。),そのことを「素因減額」として,損害額から一定割合減額すべきだという主張が必ず出されます。

本件でも,そのような「素因減額」について,裁判所が認めると,裁判を起こしても,保険会社の提示額よりほとんど上乗せすることができない可能性がありました。

しかし,依頼者は,「どうしても,このままでは納得できない」ということで,訴訟による解決を強く望んでいました。

また,依頼者は,自身が加入している任意保険会社と「弁護士特約」を結んでおり,

「訴訟を起こすことによる弁護士費用は,保険会社に負担してもらえる」

という契約となっていました。

もし,本件において,依頼者が「弁護士特約」をつけていなければ,私としては,裁判を勧めることはできませんでした。

なぜなら,本件の場合,もし「弁護士特約」がついていなければ,弁護士費用として,

着手金  21万6000円(税込),

報酬   回収額の1割程度

を依頼者自身に支払ってもらうことになる(自己負担)からです。

本件では,

① ご本人が裁判による決着を強く希望していること

② 「弁護士特約」により,依頼者自身が弁護士費用を負担しなくて済むため,保険会社の提示額より少しでも上乗せ出来れば,その分,依頼者の利益になること

から,あえて訴訟に踏み切りました。

その結果,依頼者は,200万円保険会社から提示されていた金額より,正味40万円を上乗せした金額の)支払を受けることができました。

 

◆ 弁護士のコメント

交通事故事案であり,担当裁判官の個性もありますが,本件の裁判では,二回目の期日には,裁判官が,

「『素因減額』もある程度考えざるを得ないでしょう」

というような発言をしたうえ,裁判所が計算した和解案として,約190万円という和解案が出されました。

今まで,交通事故の裁判などにおいて,裁判所から提示された「和解案」の金額が不満で,その後,徹底的に争う姿勢を示し,被害者本人に,事故の態様やその後の治療状況,事故により被った生活上の諸々の不便さなどを証言してもらったりしたことも何度かあります。

しかし,ほとんど,和解案で裁判所が提示した額と変わらない結果しか出ていませんでした。

そのようなことから,不満はありましたが,裁判所や相手方(保険会社の代理人)とのやり取りの中で,

「何とか丸い数字で200万円にしてほしい」

と粘ったところ,相手方も了解し,200万円で決着がつきました。

その結果,裁判前の加害者側の保険会社の提示額より,40万円上乗せすることができました。

また,「弁護士特約」を結んでいたことにより,弁護士費用は一切負担しないで済んだことから,依頼者の方は納得し,大変喜んで下さいました。

実際,交通事故に遭い,その損害賠償が問題になる場合,弁護士に依頼しなければならなくなることが多々あります。

そのような場合に備えて,保険会社の宣伝ではありませんが,「弁護士特約」をつけておいた方が良いと私は思っています。