建物明渡請求事件


◆ 事件の内容

依頼人は,千葉市内にビルを所有し,その1階を飲食店に貸していました。

しかし,賃借人は,賃料は支払うものの,契約書に禁止されているにもかかわらず,勝手に看板を設置したり,部屋の内装を無断で改装するなどの違反を行っていました。

当時は平成23年7月でしたが,賃貸借契約の満期は,平成24年6月末日までで,貸し主である依頼人から,契約の更新はしたくないので,更新しないで済むようにしてほしいと依頼を受けました。

 

◆ 事件の解決

 建物の更新を拒絶するためには,貸し主は,借り主に対し,期間の満了の1年前から6ヶ月前までの間に,更新をしない旨の通知をしなければなりません

これをしないで,更新の直前になって,更新拒絶をしても,法律的な効果はありません(借地借家法第26条1項)。

そのため本件は,まず,内容証明郵便で,借り主である相手方に対し,この間の契約違反を記載し,平成24年6月30日以降,契約を更新する意思はない旨,伝えました。

 

 これに対し,相手方から,「今すぐではないが,準備ができ次第,建物を明け渡しても良い」との連絡が入りました。

 

 その結果,借り主(相手方)と協議して,借り主の方で解約するときは,3ヶ月前までに通知をするか,または,3ヶ月分の賃料を支払って解約することと,原状回復を約束する合意をしました。

 

 その後,平成24年2月8日を解約日とし,それまでに原状回復して頂くことになりました。

しかし,工事が二ヶ月程遅れてしまったため,その分の賃料は敷金から差し引かせて頂いて,無事,明け渡しが完了しました。

 

 

◆ 弁護士のコメント

本件では,借り主である相手方も、商売がうまくいっておらず,いずれ立ち退こうと考えていたようで,比較的スムーズに明け渡しが完了しました。

しかし,なかには,賃料を滞納していながら,居座り続ける賃借人もいます。

そのような場合には,債務不履行を理由として,一方的に契約を解除して,明け渡しを求めることができます(但し,裁判手続を取らざるを得ません。)。

また,裁判手続により,「明け渡せ」との判決が出ても,賃借人がさらに居座り続ける場合もあります。

この場合には,強制執行の手続きを取り,執行官により,強制的に立ち退いてもらうしかありません。

強制執行といっても,最初(第1回目)に執行官が賃借人を訪ねた際に,いきなり,強制的に明け渡しを求めることはありません。

1週間ないし10日程度の日数をおいて,執行官が再度訪ねるので,それまでに必ず明け渡すように求めるような方法がとられています。

なお,私が経験した例では,賃借人が,必要なものは持って出ていくものの,不必要な家財道具については,置きっぱなしにしたままいなくなってしまうということもありました。

このような場合は,一旦,貸し主の方で,残された家財道具などを持ち出し,保管して,一定期間後に処分しなければならず,その費用も貸し主が事実上負担せざるを得ないこともあります。

以前,明け渡された部屋に、位牌が残されていたこともありました。

その際は,捨てるわけにもいかず,私の方で,懇意にしているお寺の住職に頼みこみ,供養してもらいました。